旅情とパーラメントを考える。
HM STING 04 24th, 2010
【クモハ】 ク―制御車、運転台を有している車両を示す。モ―動力車、モーター動力にて作動する車両を示す。ハ―車両が普通車であることを示している。クモハ、暗号じみた言葉だが、その意味は昨今の鉄道ムーブメントにて多くの方に認知されていることだろう。しかし、残念ながらその意味を知らない極僅かな少数派が未だに残っているとすれば、旅のしおりは置き去りにせざるを得ないだろう。鉄道の魅力をやんわりと教授すべく小旅行は予定を大幅に変更し、レールに揺られた。
年度末の三連休の頃の鉄道旅行と言えば、大大的にも報道されていた【キハ52引退】。大糸線ラストランに行ってきました!のではなく、まさかの「自転車でも行けるのではないか区間」のローカル線。それでも旅の恥はなんとかで、ちゃっかり駅弁とワンカップ酒を携えて乗車した。
無駄に揺れる車内で箸を伸ばせば、それだけで何だか特別な思い出が残るような心持ちにさせる。それが駅弁の持つ不思議な魅力。敷き詰められた郷土料理の彩りを愛でながらカップ酒を煽れば、見慣れたはずの風景も何処か懐かしくも感じさせるから不思議なことだ。駅を一つ超えるごとに田園風景は更なるのどかを映し出す。そして入れ替わる乗客も何処か垢抜けない風貌に変わってきた。
意図とすることと目標がまるで見えない田舎の不良少年たちは、見事なまでに間違えた融合を露呈している。たぶついた洋服はいかにも現代の若者風ではあるが、ポケットから覗かせた煙草の箱には“パーラメント”と、確かに“パーラメント”と記されていた。旧、マフィア煙草―― 思わず口に含んだ駅弁を噴出しそうになりながらも、もはや目を離せない私が居た。しかし、その恐ろしい観点から目を離せなかったのは私だけではなかった。停車した駅で車内に現れた車掌の鋭い眼光が瞬時にポケットの中身を訝しむ。硬い表情のまま歩みを進めた車掌の小さな伝令が、私の耳にもそっと伝わってきた。
パーラメント、パーラメント2名――
伝令が何処に届けられたものなのか私には知る由もなかったが、おそらくパーラメント2名たちは常習犯なのだろう。次の停車駅で勢い良く車内を飛び出し、全速力で線路を飛び越えて行く姿が警鐘の音と共に遠くなって行った。
クモハ―― 子供たちが大人になりこの意味を知る頃には、現存するどのキハ型車両ももう現役ではないだろう。そう感慨深く思ってみれば、自転車でも行けるのではないか区間の鉄道もまた、深い旅情を感じさせた。
ぁ、パーラメントも売ってないだろうねその頃には――
(笑)




