HM STING 01 29th, 2012
南東の風はやや強く川を上っているが、波は穏やかである。予報通りの波高で気温も高い。年甲斐もなくはしゃぐ私たちの胸は期待で膨らんでいた。いよいよ東から白んでくると、小刻みな蒸気音を立てて渡船は接岸した。とても不機嫌そうな顔で降りてきた船頭が待合のベンチを立つ私たちを一度にらみつけた。
怒声のように荒々しく今日の海況を話す船頭の言葉に、涼しい顔の私たちはそのまま凍るような感覚に苛まれた。波こそ穏やかなれど強風につき今日は中止にしようと思っていたと、船頭は煙草を燻らしながら沖の方を見つめた。
「昨日も二人落ちているからな」と——
真冬の沖堤防への挑戦を選んだのは、まず実績のある釣り場だということ。そして立入禁止の柵などがない「合法的」な釣り場だということ。本当に合法的かどうか実は分からないが(笑)極めて厳しい状況にこそ大物は潜んでいるというもの。また、釣り船やボートでの釣りは私の信条に反則するが、渡船はそれとはまた違う。二本の足で沖堤防に降り立つのだから、これは正攻法だ。
一人は助けたけれど、もう一人は流されたと(それでも助かったらしいが)いちいち新聞にも載らぬ、よくある事故だという船頭の話に二人とも凍っていると、凝視された同行者がいきなり怒鳴られて解凍させられた。ズック!慌てて履き替えるも、同行者のニーブーツにスタッドは打たれていなかった。そうは言っても晴れているし大丈夫でしょうと平静を装うと、船内に釣具を積み込んでいた常連客が大きな笑い声を上げた。海苔がね、つるつるなんだよ—— 「ノリツル」だと高らかに笑う常連客は、私のブーツにも大丈夫かな?と笑みを浮かべた。SHIMANOじゃなきゃダメだよと、SIMMSが笑われた。
新参者に照準が絞られると揶揄は続いた。私たちよりも明らかな薄着に防寒対策を指摘される。船頭さんに至っては試供品?ICE GUARDとプリントされた薄手のジャンパー一枚だ。私はお前が心配だ。アルパイン用なんだけどと説明しても、SHIMANOとDAIWAとYOKOHAMAタイヤしか知らないのだから通じない。からかわれて少しだけ腹を立てたが、確かに同行者のニーブーツではノリツルに耐えられない。海況も悪そうだし、昨日は二人も落ちているし・・・。一人は流されているし・・・。冷静になると、嫌みな助言だがありがたい意見でもあると思わせた。
初めてということもあるし、今日は辞退と決断する。また改めると伝え、乗り場を離れようとすると、急に顔色を変えた船頭が機嫌の良さそうな声で引き留めた。結局は人を渡さないと儲けにはならない渡船のこと。
「自信があるなら、乗せますよ!」 ——どっちなん!
沖堤防への挑戦はまさかの乗船失敗で終わったのだが、後に強く降り出した雨に辞退は英断だったと振り返った。ノリツル、恐るべしっ(笑)
HM STING 01 19th, 2012
不気味なほどに穏やかな海はべた凪で、透き通る潮が青々と輝いていた。まさしく千載一遇の大チャンスが到来したのだが、こんな好天にも釣りには行かず、突然真面目の毛が生えたようにプチ残業までこなす私は、私自身が不気味であった。仕事なんかしている場合じゃないのに、相当ダサい——(×)
確か、セルビッチ(赤耳)と呼ばれるディテールを持つモデルまでがヴィンテージとして成立するのが古着の世界。年代で言えば80年代の中頃までの物を指す。ambassadeurリールの世界もこれに大体時を同じくして、ヴィンテージであるか否かの境界線を引かれることが多い。そのヴィンテージ品と現行品の間に生じる格差はとても大きく、モデルは同じでもディテールが違えばそれはもう相当ダサいとされるのが一般的な見解であることが多い。
しかし時代の波に長年埋もれてきた、かつてのダサい品も今となってはミドルエージ。見方を変えれば、どうしてこれが中々渋いと気付かされた。【ambassadeur USA 6000C】はその名の通りDesigned and Built in USA。ギア比は5.3:1で、スプールシャフトが分離するウルトラキャスト構造を持つ。軽量アルミフレームの自重は290gとすこぶる軽いのも特徴だ。これらの機構はヴィンテージ品と比べて一概に良し悪しを決めることは出来ないが、それでも現代の英知にはより近いということが大きな魅力でもある。
相当ダサいとされる年代品。ミドルエージのリールが今、私の心を不気味に誘うのであった。
(笑)
HM STING 01 17th, 2012
ようやく寒気が抜けて、明日から週末にかけて波高は一メートルを下回る見込み。この日を逃せばまた日本海は荒れ、締め切りまで波飛沫が飛ばされることになるだろう。またとない絶好の機会。さて、日中の仕事をどうするかっ——
初釣りの話が去年の引き続きの展開でタコ釣りの話というのも、なんとなく景気が悪そうで少し不本意なのですが、厳冬期こそが「本番」ということで私を急かせます。いよいよ接岸してくるのは北海のモンスターこと「ミズダコ」。世界最大種であるこのタコが、何故だか私の地元で釣れちゃうもんだから、残念なことになりました(笑)
三十キロにも四十キロにもなるモンスターですから、相手にとって不足はなく釣り挑むことはとても楽しみ。しかし、問題は釣り場にありました。接岸する釣り場のほとんどが釣り禁止、立入禁止になってしまっているという現状に頭を抱えています。
大物に釣り人は夢を抱くのでしょう。うねりを伴い激しく荒れる海にも果敢に挑んでは、毎年大勢の釣り人が命を落としています。沖へと長く続く大堤防は高波でナイアガラの滝のようになっています。それでも果敢に挑むのですから、、、。命懸けと、私は良く口にしますがこれは違います。無謀極まりないだけ。これは阿呆だと。おまけに、事故が多いから釣り禁止になり、厳重に敷かれた柵で立入禁止になる。これも当然の報い、結末ですね。
それでも懲りない面々は夜な夜な柵を跳び越え、大堤防に忍び入るとのことだからどうしようもない。有刺鉄線に引っかかった「もんぺ」の切れ端が、風になびいて帰らぬ持ちの主を待ち侘びているとの冗談話を聞いた時は、大爆笑の後に絶句しました。本気の阿呆だと(笑)
また、その独特な釣り方は既に釣りの枠を超えた道具を用います。むき出しの大型のテンヤ針にはやっぱりプラスチックのカニを添えて。激しくド派手な仕掛けはピッカピカの防鳥テープ仕立て。竿は短くて太い釣り糸はもはや糸ではなくワイヤー巻き。おバカのフルコース的な道具にプラスして、完全防備の釣り人が背負った鋭いギャフはもはや武器にしか見えません。真冬の銀行強盗の他なりません。
タコはルアーフィッシングとして成立する好対象魚ですが、残念ながら既存の釣り人の意識が低すぎるのでしょう。世界最大級のバカっぽさは無謀の極みです。マナーというか既にルール違反である釣り場への侵入しかり、釣りを超えた激しい道具しかり。もんぺしかり。
私は強盗じゃない。まっとうな釣り師だ!と決起して、強くて操作性に優れた釣竿を握りました。が、一体何処で釣れるのか—— とても憂鬱な時間が過ぎて行きます。
(笑)
※画像は対ミズダコ用に改良を施したSESAME-L。スカート、ブレード仕様でフックはステンレス製(バーブレス)に交換。フロッグ・ルアーこそ究極のルアーだと信条する私だから、やっぱりこれで釣らなきゃ意味がない。本気です、俺!
HM STING 12 26th, 2011
イカ釣りの専門誌にタコ釣りの釣行記を掲載しています。試行錯誤を繰り返す、私のこの秋の低迷っぷりも一入ですが、今号では何気に良い型を釣り上げています?!(笑)お求めは書店、釣具店でドウゾ。
「こだわりのスタイル」がどうのこうのとしきりに入るナレーションは何だか言い訳のように、言うほど荒磯ではない磯でベイトタックルを振る釣り人を懸命にかばう。BSで放送されている釣り番組で、パイオニアとかカリスマとかとされる?釣り人の釣行が放送されていた。
そのこだわりとやら覗いてみれば何のことはない。設えられたピカピカのアンバサダーはオールド品でもなければただの現行品。二十一世紀の釣具はそうだねー滅多に錆びないだろうねーとそのこだわりとやらを訝しむ。
6000番台のオールド・アンバサダーを海水で使用すれば、たちまち錆びとの闘いが開戦する。クリックホイールをはじめ、どうしても錆びてしまう特定の部品がギア部に集中するため、使用後の完全分解洗浄は必須だ。これは手間であり面倒な作業だ。そもそもオールド品はその性能・機能面でも現行品に当然劣る。それでも全てを払拭する最大の利点があるのはSO、「カッコイイ」から他ならない。不合理で機能的でもないが、それでもカッコイイから使用する。それを「こだわり」と人は解釈するのだと、私は信じて止まない。
現行品のベイトタックルを何だか引けた腰で磯から投げるその釣り人の姿に、視聴者はどんなこだわりを見出せば良いのだろうか。特別ベイトタックルで挑む理由もなければ、特別カッコイイわけでもない。ましてはそれで釣果を伸ばせているわけでもなく、いや、むしろ釣れていないではないか——
貧果で成り立たない番組はこだわりの釣り人に、いよいよスピニングタックルを持たせた。それでようやく釣れた一本だったが、小型だった。飛行機乗って遠征して番組まで担いだ釣果の言い訳が全てその謎の「こだわり」だとしたら、そんなこだわりは即座に捨てるべきである。バカか(笑)不合理で、機能的でなくとも、だ。それでも結果を残すからカッコイイのであり、こだわりなのではないか。釣れないけどカッコイイ?バカか(笑)
以前にもこの釣り人の釣行が放送されていたが、取材対象を間違えてるのでは?テレビやメディアなどはそんなものなのか。パイオニアとかカリスマとか呼ばれている?のなら、せめて命かけろよ、命——
テレビの画面に向かい声を荒げる、師走の私でありました(笑)
HM STING 11 14th, 2011
それはスレ掛かりじゃないの?という大方の見解を無視して堂々と言い張るのだから、やはり本当にルアーに食らいついてきているのだろうか。コノシロをハードルアーで釣るという無謀な挑戦、それが「コノシリング」。挑む釣り人、三浦 J FOXは独自の釣法をそう命名したが、やっぱりそれはスレ掛かりじゃないのかなと私も思う(笑)
タコも今年は良く釣れますよと自宅裏での釣果を報告する氏だったが、その極上の食材を食卓には上げないというから何とも勿体ない。市場に出回る輸入物とは雲泥の差がある地物のマダコ。抜群の食感で食味はとても淡い。そして元気の源とされるタウリンが豊富に含まれている健康食材でもあるのだから、食べないのはやはり大変勿体ない。
週末になれば北へ南へとタコを求めて釣り歩く最近の私だったが、釣趣だけではなくこの食味が原動力の一つでもあるのだ。
——午前五時半。北の漁港で夜明けを待つ。予想通り、釣り人の姿はなく穴場は健在していた。薄く明けてきた朝に釣竿を握るが、漁港内に仕掛けられていた多くの蛸壺に肩を落とした。壺に繋がるロープが岸一帯に張り巡らされ、釣ることもままならぬ有様。まさかその蛸壺近くで釣るわけにも行かず、明け方より早速釣り場にあぶれてしまった。北の漁港は穴場だが、釣り場というよりは漁場であったのだ。海の恵みを生業としているその蛸壺はきっと必死なのだろう。
仕方なく大きな漁港の大突堤で釣り竿を出すも、人気の釣り場ではそう簡単には当たらない。見渡せば多くのタコ釣り師がバカみたいなタコ釣り仕掛けを垂らしていた。
防波堤でのタコ釣りは底を取るのが基本とされる。仕掛けを直下に落として着底させ、その仕掛けをずるずると引いて歩くだけという、バカみたいに単純でとても退屈な釣りだ。先に釣り歩いた人が有利とされるのでそれは運試しと変わらない。その釣法は何度も言うがやっぱりバカっぽい。そんな釣りに相対し、あくまでキャスティング、投げて釣ることにこだわる私だったが、ルアーの操作性が悪い足場の高い釣り場では思うように釣果を伸ばせない。苛立つ私にプラスチックのカニを釣り針に載せた、旧式のタコ釣り師が話しかけてきた。
「どこもダメみたいだす」
貧果を分かち合おうという笑顔の口元だったが、前歯の抜けた隙間がまたバカっぽい。どの名だたる釣り場も釣り師も今日はダメだす、釣れていないからお宅も安心するだすと言われて、私の苛立ちはいよいよ頂点に達した。一緒にするんぢゃねぇ、このタコ野郎!
釣りは運試しではない。魚類へのそして自然への挑戦である。洞察し考察する行動力が技術になって釣果を生む。誰かが拾い損ねた魚を釣り上げることにどんな考察力が必用だろうか。私は私の釣りの原点に戻った。誰かと同じことをしていても、それでは何も始まらない。
広大な大海原を見渡せば、点在する沈み根が浅場にも多く見られた。美しい景観の岩礁帯だが、それ故に釣り人を硬く拒む。激しい根掛かりはきっと釣り人の心を容赦なく折るのだろう。釣り人の姿は皆無であった。
船に乗り沖に出れば?釣り人の少ない夜釣りに出れば?どれも卑怯でそれは何とも男らしくない釣りだ。蛸壺なんて論外だ。親から貰った二本足で対峙することに意味がある。夜行性の魚とて昼間に釣れないこともないのだったら、そのくらいのアドバンテージはくれてやる。釣りだからそれで丁度良い。たかがタコ釣りとさげすまされてきたのは、進化もせずただ呆然と底を取るバカな釣りを続けた人間が要因だ。一緒にするんぢゃねぇ、このタコ野郎!
岩礁に登り、根を読むと私は確信が持てた。根掛かりを回避させるアプローチのラインを考えて投げる。むき出しの岩陰にルアーを送り込むと結果は顕著に表れた。貪欲に捕食する磯のマダコは力強く、また浅場が故に強いアワセと早い巻き取りで勝負しなければ、簡単に底にしがみつかれるという難しい条件が揃う。時折襲われる強い波しぶきも、遮る人工物が何もなく正面に吹き付ける北風もまた厳しい。だからこそ結果は顕著に表れる。浅い岩礁帯でのキャスティング・ゲームは真夏のヘビーカバー・ゲームに通ずる、エキサイティングでエクストリームな釣りを感じさせ私を興奮させた——
刺身、唐揚げ、煮物に酢の物。大きな鍋にたっぷりの湯を沸かし、ほうじ茶を煎れる。内臓、目、くちばしを取り、丁寧に塩で揉んでぬめりを落としたをタコを足から入れて一分ほど茹で、大ざるに取って冷水で熱を落とせば出来上がり。何と言ってもマダコはレアに茹でた半生がとても美味い。あれこれと調理方法を考えているうちに、つまんで半分くらいなくなっているほど美味い(笑)砂地で簡単に、そして多く釣れるイイダコとて見くびるなかれ。醤油、砂糖、みりん、酒、五匹程度に対して、おおさじ一の同じ分量で煮ること十分ほどで照りが出てきたら完成。
これがまたお父さんにはお酒、女子供にはご飯が良く合う絶品。焦がさないように注意して、是非お試しを♪